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書評:『エクサスケールの衝撃』 (+追記)

20150619_book.jpg


更新


・(2020-04-01) 後日談を追記。

本の概要


・この本は amazon の内容紹介によると…

2014年夏、ある新しい半導体が日本で誕生した。純国産プロセッサとして独自開発された同半導体は、画期的仕様と性能に加え、特筆すべき省電力性を備えている。
その大規模プロセッサを京速計算機「京」と同じ8万8128個使用した場合、理論上は「京」の128倍に上る性能を持つスーパーコンピュータが実現される。この性能は1.28エクサフロップスと言い表され、人類が初めて「エクサ」という数値単位の演算性能に到達することになる。
その数値単位の性能によるコンピュータ処理は「エクサスケール・コンピューティング」と呼ばれ、新たに「前特異点」とも定義すべき大きな変革をもたらす可能性を秘めている。「エネルギーがフリーになる」「働く必要のない社会が出現する」「人類が不老を得る」……。
世界コンピュータ・ランキング消費電力性能部門「Green500」で、独自技術により世界第2位を獲得した研究開発者が描きだす鮮烈な未来。
ref: http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%AE%E8%A1%9D%E6%92%83-%E9%BD%8A%E8%97%A4-%E5%85%83%E7%AB%A0-x/dp/4569818927


・amazon のカスタマーレビューでは
  星5つ : 13
  星4つ : 1
  星3つ : 1
  星2つ : 1
  星1つ : 1
 と非常に好評な本。

書評


・日本が次世代スーパーコンピュータの開発競争から脱落できない事はわかるが、この本は次世代スーパーコンピュータを買いかぶり過ぎている。まるで昔の時代劇でよくあった朝鮮人参を超える万能薬として扱われている。次世代スーパーコンピュータによって不老不死が実現できるだの、カネが社会から不要となるだの、衣食住がタダになるだの、勤労の義務から解放されるだの…地球を覆い尽くすほどの巨大な大風呂敷を広げている。

・確たる科学的裏付けに基づいたノンフィクションだ…と思うと裏切られた気分になるが、思いっ切りフカしまくった SF 小説、思考実験の類だ…と思って読めば楽しめる。実際、面白かった。

・日本の未来については暗い話ばかり(少子高齢化、財政危機、中国との軍事衝突の危惧…などなど)が蔓延る中、 20~30年先の日本は楽園のようになりうる…と述べたこの本は、大人向けの御伽話ともいえる。専門家が明るい未来を語るので読者は希望が持てるのだろう。この本が好評なのはこの明るい未来像が大きく作用しているはず。

・特に 443ページからの「1歳児のまま成長が 20年間も止まったままの女性」の話は興味深く読んだ。この女性は「人間の不老」が現実に存在しうることを示す稀有の実例だという。著者は医者の資格を持っているというのでひとまずはその話を信用するとしよう。

・この本の著者は Ray Kurzweil の「予言」(あと 20~40年で AI が人間の知性を凌駕する、というアレ)を真に受けている。しかし、それが実現する可能性はほとんど無い。なぜなら Ray Kurzweil の「予言」は「風が吹けば桶屋が儲かる」式の甘い見通しや楽観的な仮定が 10段も 20段も積み重なることでかろうじて成立している。当然、どれか一つの段がコケれば総崩れ。

(2015.06.19) 作成
(2015.06.20) 一部表現を変更




(以下、2020-04-01 追加分)

はじめに


・書評の内容に関する追加でないが、この本の著者が実刑判決を受けたという後日談を追記しておく。

・上の 5年前の書評では「思いっ切りフカしまくった…」と述べたが、「被告は詐欺罪の起訴内容を認め」…とあるから、実務でも同様の姿勢だったようだ。

一部引用



スーパーコンピューター開発会社「PEZY Computing」(ペジーコンピューティング、東京・千代田)による助成金詐取事件で、詐欺などの罪に問われた同社前社長、斉藤元章被告(52)の判決公判が25日、東京地裁であった。野原俊郎裁判長は懲役5年(求刑同8年)の実刑を言い渡した。

被告は詐欺罪の起訴内容を認める一方、法人税法違反罪などについては「適切な節税だったと思っていた」と一部無罪を主張していた。判決は脱税の故意があったとして被告側の主張を退け、全ての起訴内容を認定した。

ref: スパコン助成金詐取 前社長に懲役5年判決、東京地裁  :日本経済新聞 - https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57202170V20C20A3CC1000/


(2020-04-01)

履歴


(2015-06-19) 作成
(2015-06-20) 一部表現を変更
(2020-04-01) 後日談を追記
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